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『新サクラ大戦』のレビューを掲載しています。

ゲームカタログに載せられない『新サクラ大戦』レビュー

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レビューのタイトルの由来や掲載の経緯等についてはこちらをご確認下さい。

概要

サクラ大戦』は、セガゲームスから2019年12月12日に発売されたPlaystation4用ドラマチック3Dアクションアドベンチャー

 

サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~』以来14年ぶりとなるサクラ大戦シリーズのナンバリングタイトル第6作。
外伝を含めると『ドラマチックダンジョン サクラ大戦 ~君あるがため~』以来11年ぶりの新作となる。

 

『V』から12年後の帝都・東京を舞台に、新たなる帝国華撃団花組の活躍を描く。

 

リブート作でもあるためナンバリングタイトルでありながら番号は割り振られておらず、メインスタッフも旧作から大幅な入れ替えが敢行されている。
サクラの原作者である広井王子氏は「原作」としてクレジットされ一部の歌曲の作詞を担当しているが開発には参加していない。
かつては広井氏が代表を務め、旧作では企画や世界設定、サブキャラクターのデザイン原案などを担当したレッド・エンタテインメント関与していない*1

 

それ以外のメインスタッフの変遷については「特徴・旧作からの変更点」を参照。

 

開発体制及び作品の方向性について、龍が如くシリーズの総監督でもある名越稔洋氏は「既存のファンに向けただけの作品になると、セールスもある程度見えてしまい、ジャンルとしても制約があるので、ぶち壊す部分をどの程度許容出来るかを模索した。壊せないのなら制作には反対だった」「壊す方向に会社も舵を切り、私は船長として従来の方向に戻らないように開発陣を見届けた」「今回は広井王子に協力を仰がないといったことは私が決めた」と 電撃オンラインの記事で説明している*2

あらすじ

太正十九年(1930年)。帝都・東京で「降魔大戦」と呼ばれる戦いが勃発。大戦に参加した帝国華撃団(帝撃)、巴里華撃団、紐育華撃団は自らの「消滅」と引き換えに世界を救った。

 

旧華撃団の功績は世界中から称えられ、「世界華撃団連盟(WLOF)」が設立。上海、倫敦、伯林など、世界中に華撃団が誕生した。やがて、WLOFは平和の祭典「華撃団競技会」を開催し、各国の華撃団は歌劇(演舞)と戦闘(演武)の技術を競い合いその力を高めあった。2年に1度のこの祭典を人々は「世界華撃団大戦」と呼び熱狂していった。

 

太正二十九年(1940年)。帝都に誕生した新たなる帝撃は世界華撃団大戦での優勝を目指していた。だが、再び現れた降魔と謎の敵によって「世界華撃団大戦」は「世界の命運をかけた戦い」に豹変する。

特徴・旧作からの変更点

ストーリー

  • 秘密部隊だった華撃団が公の存在となり、都市の平和を脅かす魔との戦いに「華撃団同士の戦い」という要素が加わった。

 

登場人物
メインキャラクターとなる帝国華撃団花組のみ簡単に記述する。

 

  • 神山誠十郎(CV: 阿座上洋平
    • 本作の主人公。花組隊長。特命宣伝部長も兼任。
    • 旧作の主人公と異なり、アドベンチャーパートでもボイスが豊富に用意されている。
  • 天宮さくら(CV: 佐倉綾音
    • メインヒロイン。神山とは幼馴染。
    • 10年前に消滅した帝撃とその隊員であった「真宮寺さくら」に強い思い入れがある。
  • 東雲初穂(CV: 内田真礼
    • 東雲神社の看板娘兼巫女。がさつな性格だが、花組のまとめ役。
  • 望月あざみ(CV: 山村響
    • 望月流忍一族の末裔。「108の掟」を守り、本物の忍者を目指して精進している。
  • アナスタシア・パルマ(CV: 福原綾香
    • 世界的な大スタァ。落ちぶれた帝撃を立て直すための助っ人として招かれた。

 

キャラクターデザイン

  • ゲストキャラクターのデザイン原案には6名の有名デザイナーが起用されている。
  • 旧作で松原秀典氏が「キャラクターデザイン」として手掛けたデザイン原案の翻訳は、本作ではアニメ版『BLEACH』のスタッフだった工藤昌史氏が「キャラクタービジュアル設定」として担当した。

 

メカニックデザイン

  • 霊子戦闘機
    • 華撃団が運用する人型兵器。SD調の体型やモノアイカメラや3本爪のマニピュレーターなど、旧華撃団が運用していた「霊子甲冑」の特徴を踏襲している。
    • 主役機は新たな機体「無限」が務め、世界華撃団大戦に出場する各国の華撃団もそれぞれ異なる霊子戦闘機を有している。
  • 旧作の主役機「光武」や「アイゼンクライト」の発展型も登場する。

 

音楽

  • 田中公平氏が旧作から引き続き作曲を担当。
  • 歌曲
    • ゲームとしてはサクラ最多となる14曲を収録。
    • 旧作では全ての作詞を手掛けていた広井氏だが、本作では主題歌を含めた計3曲を担当した。うち2曲は旧作の歌曲の新バージョンにあたり、完全な新規書き下ろしは上海華撃団の歌曲のみとなる。
    • それ以外の歌曲の作詞はイシイ氏と、アニメ版『ONE PIECE』の主題歌で田中氏とタッグを組んでいる藤林聖子氏が手掛けている。

 

アドベンチャーパート

  • LIPSなどのシステムは旧作と同じだが、グラフィックに3Dになった。
  • マップ
    • 帝都を舞台にした旧作では大帝国劇場(帝劇)だけだったが、本作では銀座周辺のエリアも散策出来る。
    • エリア拡大に伴い、イベントを一定回数こなすと強制的に本筋のイベントに進む仕様が撤廃された。
  • ブロマイド
    • 旧作では多くて十数枚だったが、本作では百枚以上と大幅に種類が増えた。
  • コミュニケーションモード
    • カーソルを動かしキャラクターや背景をクリックし、相手との交流を深めるモード。
    • 全編ボイス付で起承転結のシナリオ仕立てになるなど、旧作に比べて作り込まれている。
    • 本作は三人称視点で進行するが、このモードのみ旧作と同じように主観視点になる。
  • スマァトロン
    • 「キネマトロン」の流れを汲む、スマートフォンによく似た携帯通信機器。
    • キャラクターの居場所が分かる地図、イベントの確認が出来る「活動記録」、ブロマイドの鑑賞といった機能がある。

 

バトルパート

  • ターン制SRPGからアクションゲームへのジャンル変更
    • 大半はステージクリア型だが、世界華撃団大戦では敵を倒した際の合計ポイントで相手の華撃団と競うことになる。
    • 操作機体は神山機を基本とし、ボタン1つで僚機に切り替え可能。
    • 必殺技やある意味で有名な恥ずかしい合体攻撃は健在*3
  • 絆レベル
    • バトルパートでの行動によって増減し、数値が高いほど機体に補正が掛かり強くなる。
    • 旧作のバトルパートの信頼度の仕様と違い、アドベンチャーパートの選択肢だけでは絶対に最大値にならない。
  • 回避
    • ステップで敵の攻撃を回避するアクション。
    • 紙一重のタイミングで敵の攻撃を回避すると、周囲の時間の流れが遅くなりその間無敵となる「ジャスト回避」が発生する。
    • 神山機のみ、ジャスト回避中に敵の耐久値が一定以下を下回っていると「一閃」によって敵を一撃で倒すことも可能。
  • ダッシュ
    • 高速移動するアクション。ゲージなどの制限はない。
    • 特定の壁に向かってダッシュすると、『3』のOPを彷彿とさせる壁走りになる。
  • いくさちゃん
    • アドベンチャーパートでバトルパートのステージを自由にプレイ出来るモード。
    • ステージクリアなどの条件を満たすと報酬としてブロマイドが貰える。
    • アップデートで本編に登場しない特殊な機体が操作可能になった。ただし、その性能は本編の機体と殆ど差異がなく、いわゆる「コンパチ」に近い。

 

ミニゲーム

問題点

シリーズファンからの批判が集中した「旧作の扱い」とそれ以外の項目を分けて記述する。

ストーリー

  • 支離滅裂なシナリオ
    • サクラのシナリオは「お約束を踏まえた荒唐無稽で勧善懲悪な王道のストーリー」という特徴があり、今回も表面的にはその流れを踏襲しようとしている。
    • だが、本作のシナリオは必要最低限の辻褄合わせや説明を放棄したかのような支離滅裂な展開が非常に多い。
    • 特に槍玉に挙げられるのが、第1話でメインヒロインの天宮さくらが「絶対にその夢をあきらめない!」と啖呵を切る場面。彼女の「夢」とは帝撃を名実共に蘇らせること。サクラの復活を待ち望んでいたシリーズファンとさくらの想いが重なり、一見すると感動的に思える。
    • 実はこの場面、本部である帝劇周辺が「魔幻空間」と呼ばれる異空間に囚われて何が起こるか予測が付かないにも関わらず、味方であるはずの上海華撃団に「足手まといだから引っ込んでろ」と戦場のど真ん中でリンチされている状況なのである。
    • 魔幻空間については後のエピソードで「一般市民がこの空間に長時間留まると生命力を奪われて死ぬ」と説明されており、知らなかったでは済まされない大失態が起こりかけていたことになる。「上海華撃団は敵の手先だった」といった展開はなく、この件を咎められないまま最後まで帝撃の味方&良きライバルとして描かれる。
    • 他にも、「神山専用の無限を調達したことで帝撃の運用資金が尽きた直後、資金の問題が解決されないうちにさくら以外の4人の隊員の無限がいつの間にか地下格納庫に陳列される」「『仮面を付けた魔物がいるが怪しい仮面(デザインが全く違う)を付けているからお前も魔物だ』という展開がある一方で、ある人物が魔物と同じ仮面を不自然に付けているのに数万人以上の観客が誰も気付かない」など、例を挙げるとキリがない。
    • シナリオ上のある仕掛けを成立させるために、「普段着と戦闘服は完全に別物」と出撃シーンで見せておきながら、戦闘服→普段着→戦闘服へと唐突に切り替わる終盤のクライマックには、本作のシナリオの特徴が悪い意味で凝縮されている。

旧作では
  • 「絶体絶命のピンチに本人も与り知らない秘めたる力が覚醒」といったご都合主義こそままあったが*4、それ以外の部分は比較的丁寧に描いていた。
  • 例えば、新型機体と資金の問題は旧作でも何度かあった展開だが、「主人公達で資金の問題を解決する」→「その後に新型機体が登場」と手順を踏んでおり、その過程にドラマが生まれていた。ある程度のご都合主義が許容されていたのも、当たり前の描写を1つ1つ積み重ねていたからこそだった。

  • ハリボテのような新設定「世界華撃団大戦」
    • 「世界中の華撃団が一堂に会して戦う」という従来とは毛色の違う設定に一部で困惑の声が挙がったもの、1940年に開催されるはずだった幻の東京オリンピックを彷彿とさせる虚実を入り交ぜたサクラらしさもあったため、好意的に受け止めるシリーズファンも少なくなかった。しかし、劇中の描写が非常に曖昧であり、そのスケールの大きさに対して内容が全く伴っていない。
    • 設定上では帝撃を含めた9つの華撃団が出場するが、実際に描かれるのは帝撃と刃を交える上海華撃団、倫敦華撃団、伯林華撃団の3つのみ。後は劇中の実況で莫斯科華撃団が言及されるだけで、神山達は出場メンバーを知っているがプレイヤーには名前すら知らされない。
    • 大会では霊子戦闘機を用いた3on3の実戦が行われる。が、相手の華撃団は隊長を含めて2人しか登場しない。本当に2人しかその場にいないのか、モブキャラ扱いで3人目が一応いるのか、3体目の機体は遠隔・自動操縦なのか、説明は一切ない*5
    • そもそも、3on3の実戦は開会式の不測の事態をきっかけに主催者がルールを変更した結果なのだが、本来の姿である「歌劇(演舞)と戦闘(演武)の技術の競い合い」の具体的な内容は最後まで明かされない。

  • 設定と釣り合わないマヌケな敵
    • 本作の敵は旧作で帝撃を幾度も苦しめた魔物「降魔」。10年前に旧華撃団を消滅に追い込んだ元凶でもあり、その気になれば世界を滅ぼすとされる、歴代で最も強大な敵*6
    • だが、「仲間にならないか」「お前達にとっても不利益だからこのまま帰ってくれ」と言って神山達を本気で懐柔しようとする場面が何度もあり、敵としての魅力に乏しい。ただのマヌケにしか見えない描写も多い。
    • 本作の降魔の目的は「帝鍵」と呼ばれるアイテムを手中に収めること。序盤は帝鍵の所在の見当がついておらず、帝都を破壊してあてもなく探している。だが、中盤になると降魔の幹部がそれまで持っていた自身の刀を唐突に帝鍵のソナーとして使い、あっさりと見つける。何故今までそれを使わなかったのか、理由は描かれない。
    • 目的達成の障害となる華撃団を排除するため、降魔は政治的圧力を行使し世界各国の華撃団を解散させる。ただし、解散した華撃団は戦力を接収されずに解散前と同じように帝都に残り続け、最終決戦では案の定彼らに邪魔される。

旧作では
  • 政治的圧力を行使する敵は前例があり、華撃団の資金源を断ったり、都市防衛の任を解いたうえでメンバーを本部とは別の場所に軟禁状態にするなど、本作の降魔よりもはるかに上手く立ち回っていた。
  • コメディリリーフの役割を担う敵が何人かいたが、「旧華撃団を消滅に追い込んだ」という設定からも分かる通り、降魔は本来であればその分類には入らない。

アドベンチャーパート

  • 没入感を阻害する統一性のない表現
    • 3Dになったグラフィックはアニメルックを再現する「トゥーンレンダリング」を部分的な使用に留めており、良くも悪くも3Dっぽさが色濃く残っている。
    • これについて開発スタッフは「プロトタイプはアニメルックで開発していたが、『現行機であるPS4の性能を100%発揮しているのか』と思い止めた」「旧作ではアニメとCGの合成が用いられたが、2019年に同じことをやっても浮く。すべての要素を同じ土俵に乗せた方が没入感につながる」と 4Gamerの記事で説明している。
    • だが、食事やデートといった1回限りの特別なモーションや衣装が必要とされる場面では、3Dではなく手描きのイベントイラストが挿入される。また、重要な場面では3DCGアニメーション制作会社「サンジゲン」によるアニメムービーが流れるが、こちらの3Dはトゥーンレンダリングを使用した完全なアニメルック。出番の少ないサブキャラクターや特別な衣装を着たメインキャラクターはやはり手書きのアニメーションで描かれている。
    • 要するに、非アニメルックの3D+手描きのイベントイラスト+アニメルックの3D+手描きのアニメーションという4つの異なる表現が混在しており、「PS4の性能を100%発揮する」「すべての要素を同じ土俵に乗せる」という開発スタッフの説明とは完全に正反対の事態が起こっている。場面毎にキャラクターの表現がてんでんばらばらなため、没入感につながるどころか逆に阻害している。

  • 時代遅れのパートボイス
    • 旧作と同じくパートボイスが採用されており、フルボイスではない。本筋と関係ないイベントにボイスがある一方で、シナリオ上重要なイベントにボイスがない場合も多い。
    • 3Dにより各イベントはアニメ的な見せ方が可能となったが、ボイスがないイベントはまるで無音のアニメーションでも見ているような状況になってしまい、前述した「場面毎の没入感の阻害」に拍車が掛かっている。
    • 旧作がパートボイスだったのは「フルボイスでは容量が足りなくなる」という理由であり、シリーズファンからパートボイスが支持されている訳ではなかった。BDの容量が50GBなのに対し本作の容量は約42.3GBとまだ余裕がある。
    • 後述するが、本作のシナリオのボリュームはサクラのナンバリングタイトルの中でも少ない部類に入る。

  • 不自由なマップ
    • マップの散策範囲が旧作より拡大した一方で、ファストトラベルは未実装、ドアを開けるだけでもロードを挟む、帝劇から銀座周辺に外出する際にはまず帝劇の玄関まで移動する必要があるなど、移動は快適ではない。
    • 帝劇以外のエリアは最低限の範囲しか3Dで作っていないのか、視点を自由に動かすことが出来ない。そのため、スマートフォンによく似たスマァトロンがあるにも関わらず、カメラを使った撮影モードがない。

旧作では
  • 『V』には立ち絵と背景イラストの組み合わせという形だったが、撮影モードが用意されていた。

  • ブラッシュアップされていないUI
    • 14年ぶりのナンバリングタイトルでありながらUIが全くブラッシュアップされておらず、現行のADVではあって当たり前の任意セーブ/ロードなどの機能がない。『V』にはあったバックログは何故か削除されている。
    • オートセーブが新たに追加されているものの、使い勝手は悪い。いくさちゃんをプレイする際が特に顕著であり、ステージクリア直後にセーブが行われない。クリア情報を保存するためにはステージクリア後に別のステージを選択するか他のイベントを進める必要がある。テストプレイをしておかしいとは思わなかったのだろうか*7
    • イベント回想がない。スマァトロンの活動記録で手描きのイベントイラストとアニメムービーとイベントの文字情報の確認が行えるが、イベントそのものが鑑賞出来る訳ではない。
    • 用語集もない。華撃団に関する歴史や過去の隊員の人となりといった情報をプレイヤーが詳しく知る術がない。帝劇内の図書室に旧作や本作の設定について簡単に説明したテキストがあるが、これはその場限りでしか閲覧出来ない。

アップデート後
  • 任意セーブ/ロードが実装された。バトルパートでも使用可能で、その場合は直前のチェックポイントの情報が保存される。
  • バックログが「復活」した。

バトルパート

  • 作品内容と噛み合わないゲームシステム
    • 「隊長1人と隊員5人以上が全員出撃する」というサクラのバトルパートの基本構造は、ターン制SRPGからアクションゲームになっても変わっていない。
    • だが、プレイヤーが操作出来るのは神山の無限とそのエピソードの主役である隊員の僚機*8のみで、後はAI制御の1機が残り4人の隊員の中から通信画面で出番が来た際に入れ替わりに表示されるだけとなっている。
    • つまり、バトルパートで実際に描写されるのは1度に3人までで、全員が一緒になって戦うことは最後までただの1回もない。シナリオ上、戦場で離れ離れになった仲間との合流という展開が何度かあるが、1度に3人までしか描写されないため、全員出撃とのシチュエーションの違いが殆どない。
    • 本作の独自要素となる絆レベルについては、その多くが「敵を倒した」「オブジェクトを壊した」「ジャスト回避を発生させた」といった行動によって上昇するように設定されている。
    • 上記の通り、本作のバトルパートは仲間との共闘感が非常に希薄となっている。「俺達の絆は誰にも負けない」「華撃団は家族」と台詞で何度も強調するが、シナリオとバトルパートの実情が大きくかけ離れている。
    • 開発スタッフはバトルパートについて、「最初は花組全員でドーンといきたいというところで、全キャラを出すというコンセプトだったのですが、アクションゲームで6人を使い分けてというのはさまざまな問題があった」とGamerの記事で説明しており、名越氏は「ウォーシミュレーションで当時のユーザーは十分満足させられるレベルにあったが、令和の時代のユーザーに今サクラを出すうえでそれで面白いなと思ってもらえるのか」というニュアンスの発言をしている。
    • これらの発言から、バトルパートをアクションゲームにすることは本作を開発するうえでの最優先事項だったと考えられているが、「6人では多すぎるから隊長を含めて3人に減らす」といった「作品をゲームシステムの方に摺り寄せる」方法は取られておらず、結局は両者が全く噛み合わない歪な内容になってしまった。

旧作では
  • 「ターン制SRPGの戦略性」よりも「仲間との共闘感と爽快感」を重視する方向に進化していき、隊員を敵の攻撃から防ぐ「かばう」、4つの作戦を使い分けて部隊全体の性能を変化させる「隊長コマンド」、仲間同士で援護が発生する「協力攻撃」&「友情カウンター」、アクションゲームのような直感的な操作性を実現した「ARMS」など、様々な独自要素が生まれた。ARMSは本作に事実上引き継がれた格好だが、それ以外は形を変えて落とし込むアプローチも取られないまま、完全に削除された。
  • また、サクラのアクションゲームは『V』の前日譚である『サクラ大戦V EPISODE 0 ~荒野のサムライ娘~』という前例があるが、こちらは「メインヒロインによるテキサスから紐育までの1人旅」として、作品とゲームシステムが合致するように作られていた*9

  • バリエーションの少ないステージ
    • 大帝国劇場周辺、工場と洞窟タイプの魔幻空間、世界華撃団大戦の競技場のたったの4種類しかステージのバリエーションがない。最終決戦もこの中の1つで行われる。
    • 全体の7割近くを占める魔幻空間は日の光も差し込まない陰鬱な異空間であり、サクラの特徴である太正浪漫感が皆無どころか、見たことある風景ばかりが最後まで続き単純に面白味に欠ける。
    • 魔幻空間は本作初出の要素だが、その存在はシナリオの本筋に殆ど絡まない。「降魔毎に生成される魔幻空間が異なる」という設定に一応意味が持たせられてはいるが、なくてもシナリオは成立するため、わざわざ殺風景な場所をステージにした必然性がない。実際、コミカライズの方では魔幻空間は丸ごとカットされている。

  • アクションゲームとして底が浅い
    • 名越氏は電撃オンラインの記事で、「今回はソニックシリーズを手掛ける“ソニックチーム”も協力して作っているんです。彼らはエンジンもアクションとしてのさばき方もうまい」と説明しているが、お世辞にも良く出来ているとは言えない。
    • 敵との距離感や間合いを図るのに便利なロックオン機能は実装されていない。特に空中の敵に対して、距離を見誤って攻撃を外す→その隙にダウンを奪われるというパターンが発生しやすい。一応レーダーはあるが、味方と周囲の敵の大雑把な位置情報しか表示されず、あまり役に立たない。
    • 防御手段が回避とジャスト回避の2つしかない。これらは地上でしか使用出来ないため、上記の空中の敵に対する対処を更に厄介にしている。
    • 最終ステージにダメージ床を大量に設置し、そこに倒さなければいけない敵が逃げ込むというケースが頻発する *10など、レベルデザインも雑。
    • 難易度自体はそこまで高くなく、空中の足場から奈落に落下してもダメージを負わず、ゲームオーバーを繰り返すと任意で耐久値を強化出来るなど、アクション初心者向けの救済処置も用意されている。
    • ただ、元々のゲームバランスがかなり大味なので、腕が上達すれば上達するほど楽しくなるアクションゲームの奥深さはない。ゲームシステムに「サクラらしさ」が残っていればまだ良かったのだが今回はそれすらないため、クオリティの低さが余計に目につきやすくなっている。

アップデート後
  • ロックオン機能が実装された。攻撃の際にロックオンした敵を自動で捕捉する。
  • 敵が1体の状況では、攻撃と回避アクションに専念出来るため役に立つ。空中の敵に対しても、以前よりかは攻撃しやすくなった。
  • ただし、敵が多数いる状況では使い辛く、範囲攻撃で複数の敵を倒した際にカメラが目まぐるしく動いたり、思わぬ方向に機体が移動するといった事態を招きやすい。オプションで「ロックオンの自動切替」をオフにするなど自分に適した使い方を模索する必要があるが、それでもかなりクセがある。
  • 画面全体に敵の方角を表示する「敵の方位情報」という機能も新たに追加されたが、こちらは殆ど役に立たない。

その他

  • 『V』の問題点がほぼそのまま
    • 前作の『V』はシリーズファンの間でも評価の分かれ、その売上不振がサクラのナンバリングタイトルを14年間出せなかった理由の1つと考えられているが、当時批判された『V』の問題点が本作でもほぼそのままとなっている*11。一部に改善が見られるが、それを打ち消すかのように悪化した部分も多い。
    • シナリオの話数は『V』と同じく全8話。これは『サクラ大戦4 ~恋せよ乙女~』に次いで少ない数字となる。『V』ではプロジェクト発表の段階で話数がアナウンスされていたが、本作では発売まで秘密にされていた。
    • 『V』にはなかった事件の裏に隠れた真の黒幕や2号機メカの登場などのお約束の展開が、本作には一応用意されている。だが…。
    • 『V』はラスボス及び幹部全員が事前の宣伝で明かされるなどの「発売前の公式のセルフネタバレ」が酷かったのだが、本作ではそれが更に深刻になっている。上記の真の黒幕も2号機メカも名前が伏せられているだけでPVにその姿が普通に映っており、終盤の重要な場面は勿論、最終決戦やエンディングムービーの一部までもが確認出来る。
    • 前述の通り本作にはミニゲームがあり、完全に削除された『V』と比較すれば改善している。ただし、クオリティそのものは低い(後述)*12
    • そして、ナンバリングタイトルでは必ずあったクリア後のオマケモードがなくなった。このモードではミニゲームの他、イベントイラストやムービーなどの鑑賞、クイズを楽しむことが出来た。

  • 価格の割に実用性の低いDLC
    • メインキャラクターの見た目を変更する有料DLCが用意された。衣装とアクセサリーの2つにカテゴリーが分かれており、カテゴリー毎に異なるDLCを組み合わせることも可能。旧作キャラクターの衣装を再現したDLCは元ネタとなったナンバリングタイトルのBGMがセットになっている。
    • 価格はそれぞれ、旧作衣装が全2種類で各900円、通常衣装が全3種類で各800円、アクセサリーが全4種類で各300円、これら全てを網羅したシーズンパスが4000円、と強気に設定されている。
    • このDLCによって本編のイベントをユニークな見た目で楽しめる…のだが、前述したようにイベント回想やバックログジャンプはおろか任意セーブ/ロードすらないため、DLCで楽しみたいイベントを手軽に選択することが出来ず実用性が低い。DLCの切り替えがスタート画面のオプションでしか出来ないのも地味に面倒。
    • 旧作衣装にセットになっているナンバリングタイトルのBGMは、『1』のテーマを選択すると本編の曲全てが『1』の曲に置き換わるようになっており、各曲をプレイヤーが自由に設定することは出来ない。また、そこまで切迫した状況ではないイベントでシリアスな最終決戦の曲、バトルパートでアドベンチャーパートのドタバタイベントの曲、といった具合に元ネタを知っているシリーズファンほど違和感を覚える選曲になっている。

アップデート後
  • ある程度の準備と手間が必要となるが、任意セーブ/ロードによって以前よりも手軽に個々のイベントをDLCで楽しめるようになり、実用性が向上した。

旧作では

旧作の扱い

  • ないがしろにされた旧華撃団
    • あらすじ」の通り、旧作で主役を務めた帝国、巴里、紐育華撃団の旧華撃団は10年前の降魔大戦で「消滅」した設定になっている。
    • 本作発表時、イシイ氏は「シリーズファンを決して裏切ることのないよう、サプライズもいろいろ用意しています」とコメントしており、「旧作キャラクターは何らかの形で救済されるのだろう」と多くのシリーズファンは予想していた。
    • 事実この「消滅」には裏があり、「旧華撃団は『幻都』と呼ばれるもう1つの帝都に降魔大戦の元凶と共に封印されている」とかなり早い段階で明かされる。
    • だが、「旧華撃団は幻都に封印されたままその救済は次回作以降に持ち越し」いう結末を迎え、旧作キャラクターは『4』の事件解決後に帝撃を引退していた「神崎すみれ」*13を除き一切登場しない。
    • 降魔の幹部である謎の仮面キャラ「夜叉」が『1』と『サクラ大戦2 ~君、死にたもうことなかれ~』のメインヒロインを務めた「真宮寺さくら」に酷似していると発表当時話題を呼んだが、その正体については両者の担当声優である横山智佐氏が「夜叉は『真宮寺さくらなのか?』とプレイヤーと天宮さくらを迷わせる存在」と語っているのが全てである。
    • 旧作キャラクターが破滅的な境遇へと追いやられ、「ナンバリングタイトルを14年間出せなかった」という経緯がありながら出るかどうかも分からない次回作に決着が丸投げされた結果、シリーズファンからの批判が集中した。
    • しかも、真宮寺さくらを除いた旧華撃団のメンバーは本編中では名前すら出さないように徹底されている*14。ブロマイドを集めることでやっと各々の名前と容姿が分かり、図書室のテキストで彼女達の活躍の少しだけ垣間見ることは出来るが、本作をプレイした新規ユーザーの大半にとって旧華撃団のメンバーは「かつて世界を救ったらしい具体的には何だかよく分からない人達」にしかなっていない。
    • 名越氏は電撃オンラインの記事で、「当時ファンだった方たちは皆歳を重ねて当時ほど熱狂的に応援してくれるとも限りません」と、シリーズファンによる売上をアテにしていないような発言をしていたのだが、仮に次回作以降で本当に「旧華撃団の救済」があったしても、シリーズファンに対する目配せとしか機能しない構造になっている。

  • 形骸化した作品の根本的なテーマ
    • サクラでは、「自己犠牲を伴う勝利の否定」をこれまで一貫して描いてきた。「舞台や登場人物が変わってもここだけは変えてはいけない。変えてしまったらサクラではなくなる」と言っても過言ではない程、最も大切にされてきた根本的なテーマである。
    • 『1』では第1話から「人の命を、勝利のために犠牲にするような戦いを繰り返してはいけない……」という台詞が登場するも最後にはある悲劇的な結末を迎えてしまうのだが、『2』では「悲劇を二度と繰り返さない」と帝撃のメンバー全員が固く誓い「必ず全員生きて帰ってくる」が華撃団の至上命令となった。舞台を巴里へと移した『3』、舞台を紐育へと移し更に主人公も変更された『V』でもそれは同様だった。
    • 本作でも、「必ず全員生きて帰ってくる」の下りに関して「以前の花組の隊長も口癖のように言っていた」とすみれから神山に説明される場面があるのだが、シナリオ終盤に明かされる真相によって、テーマの根底が覆される。
    • 旧作のある意味で理想化されたテーマに対し「現実問題として自己犠牲を伴う勝利が必要な時もある」とアンチテーゼを唱えた、かと言えばそんなことはなく、真相が明かされた直後に神山は従来通り「自己犠牲を伴う勝利の否定」を主張し、シナリオの決着もそこに落ち着く。
    • 結局、「自己犠牲を否定していたはずの旧華撃団が取り返しのつかないことをした」という事実だけが残り、結果的にテーマが形骸化している。

賛否両論点

  • 新しいキャラクターと生かされないその魅力
    • メインキャラクターについては、見た目はクール系に近いが二枚目と三枚目の両方を兼ね備えた神山、1つのことに集中すると周りが見えなくなる人間的な弱さを抱えたさくら、勝気で男勝りでありながら誰よりも繊細でナイーブな一面を持つ花組のまとめ役を務める初穂など、旧作に寄せつつも決して過去の焼き直しではない個性を持った人物に全員が仕上がっている。
    • ただし、シナリオが「主人公の神山とメインヒロインのさくら(加えて特殊な事情を抱えたあるヒロイン)とそれ以外」という方向性で構成されており、キャラクターの魅力が十分に生かされているとは言い難い。旧作でもメインヒロインは他のヒロインに比べて優遇される傾向は当然あったが、今回ほど露骨ではなかった。
    • 具体的には、特別公演の主役や終盤のバトルパートにおける愁嘆場など、旧作ではプレイヤーが選択したヒロインによって分岐が発生していたイベントが本作ではさくらに固定されている。
    • 特に初穂は、さくら優遇の皺寄せをモロに受けた人物の代表格となっている。サクラには各ヒロインがクローズアップされる「主役回」があるが、本作では初穂とさくらが1つの主役回を共有している。このエピソードでさくらの過去と内面が掘り下げられる一方、初穂については「さくらの古くからの友人」としての側面しか描かれず、さくらの引き立て役に終始してしまう。バトルパートでは世界華撃団大戦が行われ、出場メンバーの1人はさくらで固定されているが、もう1人の出場メンバーに初穂を選んだとしても、イベント分岐は何も発生しない*15
    • 優遇されたさくらも、周囲がお膳立てをする手法を取ってしまったため、彼女自身の魅力は実の所あまり引き出されていない。
    • サブキャラクターである上海、倫敦、伯林華撃団については、「落ちぶれた帝撃の復活劇」を製作者側が見せようとしたためか、6人中5人が帝撃を見下し、3人が「終わっている」「三流」などの直接的な罵倒の言葉を使い、2人が帝撃を見下しつつもさくらのことは評価しているライバルキャラといったように、単に不快なだけでなく「主人公の対戦相手」としても似たり寄ったりな見せ方になっている。
    • フォローすると、世界華撃団大戦で帝撃が勝利を収めると流石に彼らの態度は軟化する他、「対帝撃」としての側面以外に目を向ければ、各々の個性は立っている。「帝撃の復活劇」に関しては本作で終了したはずなので、次回作以降であれば1人1人の個性がより魅力的に描かれる機会があるのかもしれない。

  • 旧作から大きく変わったキャラクターデザイン
    • 漫画、アニメ、ゲームの第一線で活躍するクリエイター陣が手掛けただけあって、メインとサブのいずれもデザインのクオリティは高い。
    • ただ、ある意味仕方がないのだが、「旧作と同じくメインは藤島氏に担当して欲しかった」とするシリーズファンも少なくない。元々は藤島氏がデザイン原案を担当したすみれについては特にその声が大きい。
    • これについては久保氏も思う所があったようで、「『すみれは藤島さんにお願いしたほうがいいんじゃないですか』とセガに問い合わせた」とインタビューで公言している。
    • 上記のインタビューで開発スタッフは「世界観を統一するためにすみれのデザインも久保氏にお願いした」と説明しているが、現実にはキャラクターデザインはメインとサブを合わせて7名のクリエイターが担当しており、「それぞれのデザインが違いすぎて同じ世界の登場人物に見えない」という指摘もある。
    • 原案の翻訳を務めた工藤氏は「イラストレーターさんたちの“味”をなくさないようにすることがいちばんのキモだった」とコメントしており、メインの久保氏への雰囲気の寄せは頭身の調整などの最低限に留められている。

旧作では

  • 作り込みが裏目に出たコミュニケーションモード
    • Gamerの記事によると、「アドベンチャーパートにおける最後の大ネタ」として作り込まれたとされている。キャラクターとの交流自体は楽しいが、作り込まれた部分の多くが裏目に出てしまっている。
    • 全編ボイス付でキャラクターのモーションと連動させたためか、会話をスキップすることが出来ない。
    • シナリオ仕立てにした結果、特定の箇所をクリックしないとイベントが進行せず、始めたら必ず最後まで終わらせなければならなくなり、上記の仕様も含めてテンポが悪い。
    • 交流が上手くいった際の画面全体がキラキラ輝く過剰な演出も好みが分かれやすい。

旧作では
  • クリックが一定回数を超えると自動的にイベントが終了する他、画面外のクリックで何時でも切り上げることが出来る、手軽なモードだった。

  • ないよりかはマシ程度のミニゲーム「世界こいこい大戦」
    • 「こいこい」とは、手札の組み合わせで役を成立させ相手の点数を0にすることで勝敗を決する花札の競技の1つ。
    • ルールや点数のパワーバランスの基本部分は旧作のこいこい大戦の流れを概ね踏襲しており、プレイヤーの持ち点は10文で固定だが、相手の大半は10文よりも多い持ち点となっている。
    • 最初の対戦相手はさくらのみだが本編の進行状況に併せて徐々に増えていき、最終的には登場人物全員と対戦出来るようになる。ただし、本編をクリアした時点では半分以上にロックされており、特定のキャラクターに勝利し更に対戦で入手した点数(試合時の持ち点とは別)を支払いアンロックする必要がある。点数はBGMのアンロックにも使用する。
    • ここまでは問題ないのだが、点数を入手出来るのは対戦に勝利した時のみで敗北すると一切入手出来ないルールになっている。そのため、10文もしくは8文の一部のキャラクターを何度も相手にする作業プレイを自ずと強いられるようになる。
    • 通常対戦とは別に「真剣勝負」というモードがあるが、こちらでは相手の持ち点が倍に増え、大半が20文以上となり30文を超える者も現れる。通常対戦では敗北時に点数を支払うとプレイヤーの持ち点を増やして再挑戦出来たが、それも不可能。このモードでの勝利は一部のBGMのアンロック条件の1つとなっている。
    • 上記の通り、全ての要素をアンロックしようとするとかなりの労力と運が要求される。そもそも、こいこい自体が運の比重が非常に大きい競技だが、それが悪目立ちする仕様になっている。

アップデート後
  • 全モード共通で、プレイヤーと相手の持ち点が同じになった。真剣勝負の持ち点も調整され、最大でも「30文対30文」になった。
  • 敗北時の点数の支払いの効果が変更され、プレイヤーの持ち点は「初期値+10文」で以前の対戦で減らした相手の持ち点は据え置き、という仕様になった。「+10文」という効果がないだけで、真剣勝負でも使うことが出来る。
  • 上記の仕様変更によって、全ての要素をアンロックしやすくなった。ただし、通常対戦と真剣勝負の違いがほぼ無意味になり、プレイヤーと相手の持ち点を同じにしたことで1つの試合がより長引きやすくなった。

旧作では
  • 『1』のこいこい大戦はメインキャラクターと一部のサブキャラクターとしか対戦出来なかった。
  • 『熱き血潮に』のこいこい大戦はミニゲームがそれしかなかったためか、登場人物全員と対戦出来るだけでなく、4つのシナリオで構成されたストーリーモードと役が異なる特別な絵柄の花札という独自要素があった。

評価点

  • 進化、洗練されたメカニックデザイン
    • 旧作のメカニックデザインは『3』から各隊員機が差別化され、『熱き血潮に』でそれが余りに過剰となり賛否両論に分かれ、『V』で最低限の差別化に抑えられるという経緯を辿ったが、本作は『V』の路線を継承している。
    • 主役機の無限は旧作の主役機の特徴を踏襲しつつよりスタイリッシュなデザインになっており人気が高い。
    • 前述の通り、『V』にはなかった2号機メカも従来とは形式が大分異なるが今回は一応登場する。
    • 上海、倫敦、伯林華撃団の機体は龍やナイトなどの各々のお国柄を反映した意匠が取り入れられており、こちらも無限に引けを取らない支持を獲得している*16
    • 旧作の主役機の発展型については、過去の機体にパーツを足すのではなく全体をブラッシュアップする方向で調整されており、単なるファンサービスに留まらず「『V』から10年以上の年月が経過した」という設定に説得力を持たせている。

総評

サクラ大戦シリーズの14年ぶりのナンバリングタイトル&リブート作となった本作だが、長年大切にされてきた旧作キャラクターや作品のテーマを文字通りにぶち壊し、シリーズファンからの批判が集中した。

 

仮に「旧作の扱い」に目を瞑ったとしても、支離滅裂なシナリオにブラッシュアップされていないUI、粗悪なバトルパートなどの看過し難い問題点が余りにも多く、豪華クリエイター陣が手掛けた新しい素材の魅力が生かされていない。システム周りはアップデートで改善された部分もあるが、仕様変更による新たな弊害も生まれており、作品の完成度を劇的に向上させるまでには至っていない。

 

「サクラの待望の新作が出た」こと自体は言祝ぐべきであり、そこから生まれた新たなキャラクターの行く末は今後の展開次第かもしれないが、1つのゲームとしては純粋に完成度が低い駄作である。

 

評価:「クソゲー」及び「シリーズファンから不評」

余談

  • 「14年ぶりのナンバリングタイトル」ということからも分かる通り、本作が開発決定に至るまで道のりは決して平坦ではなかった。
    • 2008年に『紐育レビュウショウ~歌う♪大紐育♪3~ラストショウ』が開催されたが、当初はこの舞台をもってサクラのコンテンツは全て終了する手筈だった。その千秋楽の終演時に、劇場の閉館時間が迫ってもなお観客達が帰宅せずにサクラの存続を訴える事態が発生。劇場のスタッフから依頼された音楽監督の田中氏は「私が何とかしますから、今日はこれで帰ってください」と観客達の前で思わず発言し、事態を収拾させた。この一件が発端となり、サクラ復活に向けた草の根的な運動がスタッフやキャストによって始まった*17
    • 彼らの尽力の甲斐あって、舞台はライブなどを経て2013年にショウとして再開された。だが、ゲームの新作は毎年のように企画が提出されるも不採用という結果が続いていた。しかし、セガフェス2016にておこなわれた総選挙において『サクラ大戦』が「作品部門」と「復活期待部門」で1位を獲得したことでセガ社内の風向きが変わり、本作のプロジェクトが立ち上がった。
    • 没になった企画は「京都編とか未来編とかさまざまなものがあった」とのこと。

  • セガは本作について、「威信をかける」「社内の総力を結集した」などと自信を覗かせていた。
    • よほど自信があったのか、漫画や小説、舞台やテレビアニメといったメディアミックス作品が「ゲーム発売前から」発表されていた。
    • 旧作でも多数のメディアミックス作品が展開されたが、それはあくまで「ゲームが大前提」だった。サクラを象徴する存在となった舞台ですら、当時のセガの副社長でサクラの製作総指揮を務めた入交昭一郎氏が「50万本売れたらやってもいい」と約束し実際にそのノルマを達成出来たからこそ実現したという過去がある。
    • 今回、一部のメディアミックス作品に関してはゲーム発売に先駆けて展開されたが、肝心のゲームの完成度が低かったことも相まって、その手法には疑問の声も挙がっている。

  • 2017年にレッドが発売したADV『俺達の世界わ終っている。』では、「あるゲーム会社にカリスマ的なゲームクリエイターが在籍しており、その人物が人生を賭して生み出そうとしていたゲームが開発続行不可能になった時、残された仲間たちは一体何をなすべきなのか」という、本作の開発事情をメタフィクションとして捉えたようなテーマが描かれている。

*1:サクラの著作権表記はSEGAとREDが共同で記載されていたが2017年からはREDの名前が外れSEGA単独の表記となっている

*2:広井氏に関する発言は『電撃PlayStation』2019年12月号 Vol.681の84pから85pに記載されている。

*3:ただし、ジャンル変更の関係で合体攻撃は範囲攻撃から機体の一時的な強化に効果が変わっている。

*4:もはや語り草となっている『1』最終話のある超展開も、作品の世界観に合っているかどうかはともかくこの系統に当てはまる。

*5:一応設定はあるらしく、OPやアニメムービーのカットで一部の隊員はその姿が一瞬だけ確認出来る。

*6:厳密には、旧華撃団を消滅に追い込んだ降魔は更に上位の存在なのだが、今回の降魔についても「降魔大戦で倒したと思ったが倒し損ねていた」とハッキリ明言されている。

*7:なお、いくさちゃんの進行状況は2周目以降にも引き継がれるが、再びプレイするにはシナリオ上で解禁される第3話まで進めなければならない。

*8:3on3の世界華撃団大戦では僚機が2機に増え、プレイヤーが出場メンバーを選択出来る。

*9:旅が進むにつれて仲間が増えていくが、彼らがNPCとして登場するようステージ毎に自然なシチュエーションが用意されていた。

*10:神山機と一部の隊員機は遠距離攻撃を持っておらず、場合によってはダメージ覚悟で敵を倒さなければならないこともある。

*11:「移動が面倒な3Dマップ」という問題点も、『V』の時点で既に指摘があった。

*12:なお、開発スタッフは4Gamerの記事で「発売時期を伸ばして本編を作り込む方針になった際にミニゲームの収録が決まった」とコメントしており、当初は収録する予定がなかったことが明らかになっている。

*13:すみれの引退に関する設定は、『4』開発中に担当声優である富沢美智恵氏が舞台への出演が難しくなったことに伴い作られたものであり、本作初出ではない。

*14:『1』から『4』まで主人公を務めた「大神一郎」ついても、すみれの口から「あの方」という呼び方でしか語られない。

*15:旧作でも1つの主役回を共有するヒロインはいたが、2人は常に対等な関係で描かれていた。

*16:ただし、シナリオ上の扱いはあくまでサブなためか、各隊員機のデザインはカラーリング以外の差異は殆どない。

*17:詳しくは田中氏のブログ記事を参照。